プロジェクト概要

DxMTについて

我が国では令和3年4月に決定された「マテリアル革新力強化戦略」の下、「マテリアル研究DXプラットフォーム」の構築が進められています。その中で、新物質・新機能材料の創出を目指す「データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト(DxMT)」が、1年間のフィージビリティスタディを踏まえて、令和4年4月から9年間の事業として開始されました。
本事業では、材料研究の革新のため、従来とは全く異なる先駆的なデータ駆動型研究手法を生み出し、研究DXを進め、これを拠点外・事業外に全国展開します。10 年先の社会像・産業像を見据え、カーボンニュートラル、Society 5.0、レジリエンス国家、および Well-being 社会の実現に重要な材料分野にこれを適用して、革新的な機能を有する材料を創出することを目指しています。これまで人類が蓄積した叡智とデータ科学を統合し、マテリアル・イノベーション創出を加速していきます。

PDからのメッセージ

DxMT事業紹介(PD)
栗原 和枝
国立大学法人東北大学
未来科学技術共同研究センター 教授

社会の各分野でデジタルトランスフォーメーションの重要性が認識されています。科学技術研究においても、従来の実験と理論(およびシミュレーション)に加えて、新しい研究アプローチとしてのデータならびに情報技術の活用が注目され、材料科学分野でもマテリアルズインフォマティクスを用いた先駆的な活用事例が国内外で出始めています。本データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト(DxMT、ディーマテと読みます)は、内閣府が策定した「マテリアル革新力強化戦略」に基づいて文部科学省が中心となって推進するマテリアルDXプラットフォーム構想を実現する3つの柱の一つです。カーボンニュートラル・Society 5.0・レジリエンス国家・Well-Being社会などの未来ビジョン実現のために、材料科学分野でのデータ創出・活用手法と革新的な材料の創出を目的として、令和3年度のFS期間を経て、令和4年度より本格研究が実施されています。残る2つの柱であるデータ中核拠点およびマテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)との密な連携により、材料研究に新しい潮流を生み出し、幅広い産業の基盤である材料研究の革新力の強化につなげたいと考えています。
DxMTの特色は、社会ビジョン実現のために特定のテーマを推進する5研究拠点に加え、NIMSを中核機関とするデータ連携部会がおかれていることです。この連携部会では、データベースの作成やデータ活用のための共通の課題を解決する、また優れた成果の共有をはかるなどの横串的活動を行う予定です。連携により、より高みを目指していただきたいと思います。各研究拠点には、我が国トップの研究者に結集いただいており、独自性の高い汎用的な手法や革新的な材料が創出されると期待しています。
本プロジェクトは、独創と共創、そして協働がともに重要な新しい形のチームリサーチだと思います。図らずもPDの役割を担うことになり、チャレンジができる良い連携が進むよう、お手伝いしたいと考えています。
複雑系である材料開発には経験も重要ですが、新しいアプローチを生み出す本プロジェクトは、若手の研究者や学生の皆さんの活躍の場でもあります。是非、活躍してください。
成果は拠点外、プロジェクト外の人たちにも活用いただきたいと考えており、データ駆動型材料開発の基本を学べるオープンセミナーなども開講しております。是非多くの方々に本プロジェクトの活動にご参加・ご支援いただきますようお願いいたします。

拠点紹介

東北大拠点 (RISME)

代表機関:国立大学法人東北大学

代表研究者:吉見 享祐

本拠点は、日本国内の幅広い世代の異分野研究者が集結して、超耐熱性、耐水素環境、耐疲労性、耐摩耗性など、多様な極限環境下において、長期使用に耐え得る機能(「極限機能」)を備えた構造材料およびその利用技術のデータ駆動型開発を行います。構造材料が用いられている既存インフラシステムの長寿命化や、新規インフラシステムの高効率化に向けたデータ活用型マテリアル工学の構築を目指し、日本の研究力と産業競争力の強化に貢献します。

NIMS拠点 (DXMag)

代表機関:国立研究開発法人物質・材料研究機構

代表研究者:大久保 忠勝

①.データ創出から、②.データ統合・管理、③.データ利活用まで、一気通貫した材料研究のDXを推進し、世界を先導する価値創造の核となる「材料研究DXプラットフォーム(PF)」を構築、その材料DX・PFを通じて革新的な永久磁石、軟磁性材料、機能性磁性物質等の磁性材料を創製する。

東大拠点 (DX-GEM)

代表機関:国立大学法人東京大学

代表研究者:杉山 正和

2050年にカーボンニュートラルを達成するためには、再エネ発電の大量導入と水素による化石燃料代替が必須であり、そのためには超大容量、低コストの蓄電池と水電解装置を、レアメタルを使わず安価な材料で実現することが求められます。
当拠点では、東大と11研究連携機関が協力し、データサイエンス的手法を取り入れたデータ駆動型の先進的な研究手法を開発し、これらの革新的材料を効率的に創出していきます。

科学大拠点 (D2MatE)

代表機関:国立大学法人東京科学大学

代表研究者:神谷 利夫

本拠点では、科学大ー物質・材料研究機構ー高エネルギー加速器研究機構ーファインセラミックスセンターを中心に、今までにない新材料群を発掘し、実用に資するエレクトロニクス材料を開発することでSocety5.0とカーボンニュートラルの課題解決に寄与することを目的としています。
特に、低消費電力情報端末用の高移動度・高安定なアモルファス・多結晶半導体、パワーエレクトロニクス用の超ワイドギャップ半導体、高誘電率かつ高温度安定な誘電体やエネルギー・センサー材料の開拓を進めています。
本拠点では、従来のマテリアルズインフォマティクスとデータ科学をさらに進め、「研究者の材料探索に関する智慧」を取り入れたマテリアルDX (MDX) システムを構築し、新材料群の発掘・開発を高速・高効率に行ってまいります。

京大拠点 (DX-Poly)

代表機関:国立大学法人京都大学

代表研究者:沼田 圭司

Society 5.0 の実現には、サイバー空間を担うデジタル技術だけでなく、最適な実空間を支えるマテリアル技術が、カーボンニュートラルの実現には二酸化炭素を回収する機能材料が、Well-Being社会にはQOLを向上させるバイオマテリアルが必要不可欠である。本拠点研究では、日本固有のビッグデータと大型研究施設を基軸としたマテリアル研究開発のプラットフォームを京都大学で拠点化する。重要な実装領域である、高タフネス・環境低負荷高分子、高度循環型高分子、QOLバイオマテリアル、および二酸化炭素分離回収材料を含む機能性や自己修復能を付帯するバイオアダプティブ材料の開発を目指す。

データ連携部会

代表機関:国立研究開発法人物質・材料研究機構

データ連携部会責任者:出村雅彦

DxMT事業の横串機能として、5つの拠点に共通する課題に取り組み、広報、人材育成、事業外連携を担うことで、DxMTを推進するエンジンとなります。共通課題では、研究DXの推進、データ駆動・計算基盤を課題として5拠点と連携したワーキンググループを設置してデータ駆動手法の開発・共有、計測条件等の共通化を進めています。加えて、データ管理を高度化し、再利用化を促進するデータ管理システムRDEの利用支援を実施し、研究DXを推進しています。拠点間でのデータ・ツールの共用化によって、領域を超える成果の創出を目指します。事業外連携では、マテリアルDXプラットフォーム構築をともに目指すマテリアル先端リサーチインフラ事業 (ARIM)、NIMSデータ中核拠点事業(MDPF)と連携していく要として機能し、日本全体のマテリアル研究のDXを目指します。

プロジェクトに関してのお問い合わせ

DxMTデータ連携部会中核機関事務局
dxmt_office (at) ml.nims.go.jp
※ (at) は @ に置き換えて下さい.