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2023年度 DxMT人材育成セミナー (第2回)を開催しました

2023年6月15日に、2023年度 DxMT人材育成セミナー (第2回)を開催しました。

参加者数: 359名

 

【講師】

明治大学理工学部応用化学科

金子弘昌 准教授

【タイトル】

実験科学者が実践する機械学習モデルの逆解析による分子・材料・プロセス設計

 

【セミナー内容】

化学・化学工学データおよび機械学習を活用して、分子・材料・プロセスの設計を効率化することが一般的になっている。分子設計では、分子の物性・活性とその化学構造の分子記述子の間で数理モデルを構築し、モデルに基づいて新たな化学構造を設計する。材料設計では、材料の物性・活性・特性と材料の実験条件・製造条件の間でモデルを構築し、モデルに基づいて新たな材料を設計する。プロセス設計では、プロセスのパラメータの間でモデルを構築し、モデルに基づいて望ましいプロセスを設計する。分子・材料設計の研究・開発はケモインフォマティクスやマテリアルズインフォマティクス、プロセス設計やプロセス管理の研究・開発はプロセスインフォマティクスと呼ばれる。分子・材料・プロセスの開発に必要なことは y の目標値からそれを実現するための x を導くことである。これをモデルの逆解析と呼ぶ。ただ一般的な逆解析で行われていることは、x の仮想サンプルを計算機で大量に生成し、それらをモデルに入力して y の値を予測し、予測値が良好な仮想サンプルを選択する、すなわち順解析を網羅的に繰り返す擬似的な逆解析にすぎない。これでは人が事前に想定した x の探索範囲における y の予測にすぎず、当初想定しない条件でこそ発現する新機能の探索には全く対応できない。また網羅的とは言え膨大な解空間を全て探索できるわけではない。そこで当研究室では、y の値から x の値を直接的に予測する、すなわち数理モデルを直接的に逆解析する手法「直接的逆解析法」を開発している。数理モデルを解析することで、y の目標値から直接 x の値を自由自在に予測でき、適応的実験計画法の分野でベイズ最適化を凌ぐ実験条件探索の効率化を達成したことも確認されている。ただ、ベイズ最適化や直接的逆解析法により新たな分子・材料・プロセスを設計する研究が行われている一方で、実験科学者が実際にモデル構築やベイズ最適化・直接的逆解析法の計算ができなければ絵に描いた餅に過ぎない。そこでプログラミングなしでそれらの計算および種々の設計ができるクラウドサービス Datachemical LAB を紹介する。Datachemical LAB には主に、現状のデータセットを解析する最適なモデルの構築、構築されたモデルに基づいた分子・材料・プロセスの設計、仮想サンプルや分子構造の自動生成、効果的な機械学習が可能になる実験計画法、ベイズ最適化や直接的逆解析法に基づく適応的実験計画法、データセットにおける欠損値の自動補完・データの可視化、特徴量の設計・変換・選択、分子記述子の計算等の機能が搭載されている。本セミナーでは、ベイズ最適化・直接的逆解析法を駆使した分子・材料・プロセス設計の進展を紹介するとともに、Datachemical LAB によりそれらを実現する。